映画「あなたの名前を呼べたなら」公式サイト » INTERVIEWS

Q:本作を撮ろうと思ったきっかけ、そして、この恋愛物語を伝えたいと思った理由を教えてください。

A:私は今までずっと、インドに存在する「階級」について考えてきました。私が幼少の頃、インドにある私の実家には、住み込みのお手伝いさんがいました。私の家族にとってはごく自然なことでした。子どもの私には“ナニー”がいて、彼女が私の面倒を見てくれて、非常に親しい仲でした。しかし、待遇の違いは明らかでした。私は子どもながらに、この力関係に常に悩みました。どう理解すればいいのか分からなかったのです。それから渡米し、スタンフォード大学でイデオロギーや哲学について学んだ後、インドへ帰国すると、以前と全く同じ状況でした。インドと海外を行ったり来たりしながら、非常に複雑な気分でした。状況を変えたいと思っても、簡単にできることではありません。だからこそ「私に、一体なにができるだろうか」と自分に問い続けたのです。

Q:この問題を、恋愛物語の枠組みを通して描きたいと思ったのはなぜですか?

A:自分が愛そうと選んだ相手を人はどのように愛するのか、ということを考え始めていました。それから、ずっと私の頭から離れなかったインドの階級問題を、恋愛物語を通して探求できないか、と考えたのです。「自分の愛する人をどのようにして愛するのか」、また、「私たちは、どのようにして人を愛する許可を自分に与えるのか」ということを、この作品を通して問いたかった。決して説教臭くはなりたくなかったし、自分には答えがあってどう考えるべきか人に教えるような感じにもしたくなく、それに、彼女を「被害者」として描くことも絶対にしたくありませんでした。恋愛物語にすることで、平等と抑制からくる力を通して、階級間の隔たりを越えることができないというテーマを探ることができたのです。

Q:このような恋愛物語は、インドの都会社会の枠組みの中で存在し得る話だと思いますか?

A:こういった関係を公にするということは、不可能に近いことですから、もし、実際にこういったことがあったとしても、人々に知られないようにしているでしょう。未だに社会の厳しい制約が世の中を支配していますから。仮に、誰かがこういった関係を認めたとすれば、その人たちは完全に疎外されてしまうでしょうね。唯一の解決法は、国外へ逃れることだと思います。もし、それだけの経済力があれば、の話ですが。いったん国外に出てしまえば、単に文化や話す言語が異なる2人の男女に戻ることができます。二人ともインド人だとしても、文化が全く異なる環境で育っているということを忘れてはなりません。服の着方も、食事の仕方もまるで違います。そのような関係がうまくいくためには、自分たちの家族から離れなければならないと思います。

Q:ラトナが「未亡人」であるということは、物語にどういう影響を与えるのでしょうか。

A:農村部の未亡人にとって、都会は素晴らしい場所になり得るのです。自分の過去の生活を離れ、自由を手に入れることができます。もちろん、インドのどこにいるかによっても、未亡人としての立ち場は変わってきます。インドは大きな国なので、場所によって状況も様々ですからね。都会に住む進歩的な人達でさえ、未亡人になるということは実質的に人生が終わったことを意味する場合があります。未亡人がどんな服を着るべきかに関するルールは都会ではまだ少ないものの、あらゆる縛りがあります。私が知っている未亡人で、のちに他の人と結婚し、前に進んだ人は一人もいません。すでに子供がいる人は、子供に残りの人生を捧げなければならず、他の男性と一緒になりたいとか、誰か一緒に人生を過ごす相手が欲しいとかいう思いが彼女にあるかどうかは関係ないのです。そのような思いは、インド社会では完全に否定され、女性のセクシュアリティーについて話題になることは滅多にありません。